イベント EVENTS REPORTS 総文創設10周年記念 クロージングシンポジウム|2019年3月2日 総文のアイデンティティと「これからの10年」

総文創設10周年記念 クロージングシンポジウム|2019年3月2日

総文のアイデンティティと「これからの10年」

チラシ

第2部:パネルディスカッション

「これからの10年」に向けて

モデレーター:小林康夫、パネリスト:竹内孝宏、イヴォナ・メルクレイン、中野昌宏 (企画責任者)
独自の問いがなければ創造はない
小林

先ほどの第1部の中で「問題解決」という言葉が出ていましたが、私はちょっと違和感があるんですね。竹内さんが言うように現場を引き受けたときに、あらかじめ試験問題があってそれを解決しましょうなんていう現場はどこにもない。問題があってその解決のために学問が出てくるのじゃなくて、むしろ問いを立て、問題を浮かび上がらせないと、つまり問題を構築できないとまずいのじゃないかなと思うのですけど、いかがでしょう。

メルクレイン

まさにそう。私も問題解決というキーワードが出たとき、ちょっと赤信号がつきました。なぜかというと、人工知能に置き換えられない人間を作るには、問題を立てることができなくてはならない。AIは問題解決は得意です。タスクを出せばどんどん改善していろいろ解決してくれるけれど、根本的な問題を立てることはできない。それができる人間を作るのが我々の仕事です。
私は学生によくコメントさせたりディスカッションさせますが、みんな意外とうまい。ちゃんと意見を持って表現できるんですよ。ところが、「質問がありますか」って聞くと、だいたいないんですね。 要するに、質問を立てるということに慣れてない。学校教育制度に原因があるのか何なのか分からないんですが。もっと質問をさせれば、もっとクリエイティブな人間が育っていくかなと思っています。

根本的な問題を立てられる力を育てることが重要です
竹内

その力を「問題発見」という四文字熟語にしちゃうと、なんだか逆戻りしてるような感じがするんですよね。現場では、なんか変だなということにまず気づくところから始まって、それを問題が問題として浮上しないまま進めていくとリアルな大事故につながってしまう。もちろん問題解決できなきゃしょうがないけれど、それ以前に見つけなきゃいけない。ただそれをかつて流行った問題発見という言葉とは違うフレーズでどう言ったらいいのか……?

小林

問題発見・問題解決というときの問題って非常にネガティブな感じがするけど、今ここでメルクレイン先生がおっしゃっているのはそういう問題じゃなくて、まさに問いというものがなければ、独自の問いがなければ、クリエーションはないということですよね。

中野

私なんか、道を歩いていても、なんでこんなところにこれがあるのかとか、どうしてこうなっているんだろうとか、いろんな疑問が湧くんですよね。でも、非難するつもりはないんですが、学生さんたちはとくに疑問を持っていないらしい、不思議なほど。そこはちょっとマインドセットを変えてもらわないと……。

小林

どうしたらいいですか、教育者として。「問いが出てこない」と言っているだけではこれからの10年の展望はないですから、「問いをちゃんと持っている」という中野先生に、対応をうかがいたいですね。

中野

こちらのほうから発問するということですかね。授業で「これはどうなの」ってこっちが聞けば、学生は答えなければならないので、考えるとは思いますが……。

メルクレイン

留学させることです。国境を越えると、疑問を必ず持たされますから。これは総文の一つの大きな課題だと思いますが、世界各国に111校もの素晴らしい協定校があるのに、留学する人はまだまだ少ない。授業の中でも行こうと思えば海外留学ができる、いろいろな可能性が開けるんだと奨励していますが、それをどうやってもっと進めていくか。

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