イベント EVENTS REPORTS10周年記念第2回トークイベント|2018年6月23日 〈世界〉渦となって 総文から世界へ/世界から総文へ

10周年記念第2回トークイベント|2018年6月23日

〈世界〉渦となって 総文から世界へ/世界から総文へ

チラシ

第1部

Sobun大喜利:マネジメントと政策

モデレーター&パネリスト:堀内正博
パネリスト:内山隆、大島正嗣、川又啓子 (企画責任者)
「日本を売り込む:ジャパニーズ・ポップカルチャー・イベント」川又啓子

日本のアニメやマンガ、ゲームなどのポップカルチャーを紹介するイベントは、全世界で毎年200前後開催され、人気を博しています。本日はその中から、パリで開催されている「Japan Expo」、ライプチヒの「Buchmesse」、ロサンゼルスの「Anime Expo」、ロンドンの「Hyper Japan」、そしてデュッセルフドルフで開催された「DoKomi」をご紹介します。

川又 啓子

川又 啓子Keiko Kawamata

2017年、京都産業大学、亜細亜大学を経て青山学院大学に赴任。「所変われば品変わる」を実感する毎日。文化とマーケティングの間を行きつ戻りつ、現在の中心的研究テーマはジャパニーズ・ポップカルチャー・イベントの形成・発展プロセス。総合文化政策学部では、マーケティング概論、マーケティング戦略論、サービスマーケティング概論等を担当。

2000年からフランス・パリで開催されている日本のポップカルチャーの祭典がJapan Expoです。初めて視察に行ったときは、現代のフジヤマ・ゲイシャを目の前に見せつけられたような衝撃を受けました。アキバ系のリュックを背負ってちょっと小太りなオタクのような人が大勢いて、物販のブースもあり、日本の業者さんも相当出ておられて、「マンガさまさまだ」とおっしゃっていたのが印象に残っています。とにかくすごい人数で、2015年には4日間にわたって開催され、25万人弱の来場者がありました。このころから和食のブースが出たり、企業の出展も増えていきます。また、マンガやアニメ、ゲーム業界の著名人がゲストとして呼ばれているのも大きな目玉となっています。

2019年7月に開催されたJapan Expo会場風景(7月3日 撮影)川又啓子)

こちらはライプチヒで開かれたブックフェアです。ライプチヒは行政主導という点で他のイベントとは異なっていますが、内容はパリのJapan Expoとよく似ています。コスプレの仕方はドイツのほうが職人気質でちょっと手が込んでいるかなという程度で、ほとんど違いがわかりません。

ロサンゼルスのAnime Expoは、来場者数が35万人を超え、今世界で最も人を集めるアニメ・イベントとなっています。アメリカのアニメ配信の大手企業も参加していますし、日本のコミケに準ずるような同人誌の売買や、コスプレの写真を撮れるようなコーナーもあり、大いににぎわっています。街全体の経済効果という意味でも、非常に注目されているイベントですね。

ロンドンのタバコ・ドックで開かれたHyper Japanは、19世紀にタバコ貿易の倉庫として使われたところをリノベした会場で開催されました。フードコートではラーメン、カレー、牛丼などの和食を中心にフィーチャーされていて、アニメ、マンガだけでなく、工芸品やファッション、テクノロジーなど幅広い日本文化が紹介されていました。
デュッセルドルフのDoKomiでは、会場のコンベンションホールまで、A3の調査票500枚と500個の返礼品を持っていって調査したのですが、みなさんコスプレしたまま一所懸命に回答してくださいました。

以上、5つのイベントを紹介しましたが、行政主導で始まったライプチヒを除き、消費者主導型の市場形成だったことが特徴です。Japan Expoは最初2,000人から始まって15年で25万人規模になりました。Anime Expoは最初UCバークレイの日系人によるアニメクラブから始まって、35万人もの来場者が来るイベントになりました。また、DoKomiは2009年に1,800人だったのが、10年で5万人超です。つまり商業的なインセンティブがあったのではなく、ファンが集まってイベントが始まり、企業や行政を巻き込みながら規模が拡大していったわけです。ただ最近は、プロモーション・ツールとして、つまり商材として集客しやすいということで、世界中からやりたいというオファーが増えているそうです。

もうひとつ、インバウンド戦略として考えた場合、当初Japan Expoがスタートしたころは、マーケティング的にターゲットが全然違うのではないかと出店するほうもその効果に懐疑的だったそうですが、10年も続けていると、子どもが日本に興味があるからと家族ぐるみで来日するとか、フランス人の訪日客の中では20代男性が最も多く、一人で3週間ぐらいかけて日本をあちこち回るパターンがあるということです。したがって、インバウンド戦略としても予想以上に有効で、アニメ聖地巡礼など、アニメやマンガを活用したSIT (Special Interest Tour) なども潜在的な可能性があるとみています。

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