第1部
私は2008年に総文にまいりました。もともとは経済学出身で、経営戦略論とミクロ経済学、とくに公益事業が専門ですが、最近ではその一環でメディア産業論や映画産業論などにも手を広げています。
2008年、学部開設時に千葉商科大学より赴任。経営戦略論とミクロ経済学を元に、公益事業、特に放送と通信分野の研究の重点を置く。さらに放送政策から派生して映画等、映像コンテンツと映像メディアも対象。総合文化政策学部ではメディア産業論、映画産業論、経営戦略論、等を担当。
さて、映像メディアを考えた場合、2018年の今であれば、映画とテレビとネット配信、この3つを視野に入れなければなりません。市場規模で考えれば間違いなくテレビが圧倒的に大きく4兆円産業です。映画などは吹けば飛ぶような存在で、2千億円産業。映画業界の人は「紅ショウガの1年間の売上と一緒だ」と自嘲的に言いますが、それくらい小さい。一方ネット配信は、現在は1500億円規模ですのでそれほど大きくありません。
では表現の自由度という観点では、テレビはいろいろな規制に手足を縛られていますし、ネットはさほど規制がかかっていませんが、すぐに炎上しますから、そういう意味では縛られている面があります。したがって。表現の自由が確保されている映画が、影響力が大きいところがあるといえますね。これを就職する学生さんの視点で言うと、市場規模が大きいのは、生活の安定につながるでしょうが、仕事の面白さややり甲斐に関しては、映画に分があると言えそうに思います。
しかし、今から10年後、20年後を考えるとわかりません。テレビの凋落についてはいろいろなところで言われていますし、ネットが伸びるという話も聞こえてきますが、では映画がどうなっていくのかというと、正直、未来予測は難しそうです。
学生さんはネットに未来を感じている人が多いと思いますが、はたして期待通りにいくか? 例えば違法ダウンロード規制の問題がどうなるかや、ネット上のアドフラウド問題も大きくなっていて、順調に伸びていくとは限らないかもしれません。総文入学者には進路の一つにメディア関係を考えている人が多いので、彼らの期待にどう応えるか、迷いながら研究をしているわけです。
ところで、経済学出身の私がなぜ実際の映像制作に足を踏み入れたかというと、ゼミの一期生が「映像を作りたい」と言い出したことがきっかけです。しかし私は美大や映像畑出身ではありませんから、ならばそれができる人を呼ぶことにしました。このあたりは総文は、外部からいろいろなプロフェッショナルを呼ぶことができる仕組みがあったことが奏功しました。その結果、映画会社に就職したゼミ生も多かったし、放送系やネット系でも映像に絡んだ仕事をしているOBOGが増えたのは嬉しい結果でした。その前から私自身、青学とは別に、ハリウッドの有名な人たちを招いて連続レクチャーをする仕事に関わっていたことがあり、ハリウッドに出かけて勉強させてもらい、少しは映画を語れる自信がついてきました。
最後に、2015年のオープンキャンパスで公開した映像をお見せしましょう。これは当時の現役ゼミ生のほかにOBをかき集めて音楽のプロモーションビデオ風に制作したものです。非常にクオリティが高く、最後のクレジットをご覧になると、総文の力を結集させた作品であることがおわかりおただけると思います。
今後ともゼミ生たちとさまざまな映像アーカイブを作っていきたいと思っています。