イベント EVENTS REPORTS10周年記念第2回トークイベント|2018年6月23日 〈世界〉渦となって 総文から世界へ/世界から総文へ

10周年記念第2回トークイベント|2018年6月23日

〈世界〉渦となって 総文から世界へ/世界から総文へ

チラシ

第1部

Sobun大喜利:マネジメントと政策

モデレーター&パネリスト:堀内正博
パネリスト:内山隆、大島正嗣、川又啓子 (企画責任者)
「アジアのビジネスマン」堀内正博

学部長になる前の約10年間、総文の大島正嗣先生、国際マネジメント研究科の岩井千明・森田充両先生、群馬大学の税所哲郎先生などとチームを組んで実施した、アジア各国の企業組織の意思決定の国際比較調査の研究について、簡単にご紹介しましょう。

堀内 正博

堀内 正博Masahiro Horiuchi

1990年に青山学院大学に赴任。国際政治経済学部国際経営学科、専門職大学院国際マネジメント研究科(青山ビジネススクール)に在籍。総合文化政策学部には2008年の学部創設時に移籍。狭い意味での専門は経営情報論や意思決定論だが、総合文化政策学部では、マーケティングを除く経営学(マネジメント論)を担当。

2000年以降急速に力をつけてきたアジアのMBAで学んでいる企業人や学生を対象に、ビジネスゲームを使って架空の企業の経営のシミュレーションを行うことで、企業集団の意思決定の特徴をあぶりだし、日本の経営スタイルと比較したものです。具体的には、中国・瀋陽にある東北大学、香港の香港理工大学、タイ・バンコクのタマサート大学、ベトナムのハノイ工科大学、そしてロシアのモスクワ大学で調査を行いました。もっとも単に「調査させてほしい」ということではなかなか学生を集めてくれませんから、彼らに教育をするという名目で、アレンジしてもらったわけです。

中国の東北大学は国立大学で、国家重点大学にも指定されているかなり格が高い大学です。香港理工大学はファッション系が非常に強い大学、またモスクワ大学が男性社会なのに対して、タイのタマサート大学は教授が非常に少なく、准教授に女性が多い大学と、それぞれの大学で雰囲気が大いに違います。ハノイ大学はベトナム戦争の影響で20代から30代前半の若手が多く、年配の先生方をたまに見かけたら、「あの先生は戦争の生き残りだ」と教えてもらったり、モスクワ大学はベラルーシなどの周辺諸国からも学生が来ており、彼らの様子から親ロシアがどうかがなんとなくうかがえました。調査の合間には観光に連れていってもらったりもしましたが、柳条湖事件を記念して建てられた九・一八記念館には連れていってもらえなかったりと、興味深いエピソードがいろいろあった研究でしたね。

研究成果の一つが、集団的意思決定と企業文化とを統合したモデルをつくったことです。それをまとめたのがこの図です。企業文化の世界的権威であるオランダ・マーストリヒト大学のホフステード博士の測定モデルにならったもので、彼は72か国11万6000人のIBM社員を対象にビジネス文化の違いを調査し、「権力格差」、「個人主義―集団主義」、「男性らしさ―女性らしさ」、「不確実性の回避」の4つの次元によるタイプ分けを提唱しました。我々の研究では、男性らしさ―女性らしさと個人主義-―-集団主義の2つの次元で、アジアの意思決定を特徴づけることができました。

集団的意思決定と文化次元の統合モデル

しかしこうしたビジネス文化は、社会的・経済的変化によっても変化していくものです。今回の一連の研究で、ビジネス文化を探る上での方法論的な基礎を提示できたと考えています。

以上、簡単ではありますが、ビジネス文化の研究の一例をご紹介しました。

堀内 正博

第2回イベント目次へ戻る

他のレポートを見る