総合文化政策学部教授の福岡伸一氏が、世界的に活躍する音楽家・坂本龍一氏を迎える形で企画・開催した対談。テクノから映画音楽、そして最近では「async」に象徴されるように、近代の枠組みを超えた根源的な音楽のあり方を追求している坂本氏。一方、分子生物学から出発し、分子を取り出すことにまい進する研究から、現在は動的平衡をキーワードに、生命の特性を統合的にとらえることを追究する福岡教授。そのおふたりが「近代の枠組」から脱却し、「自然」に寄り添い「あるがまま」を受け入れる音楽や学問のあり方について、自由に語り合いました。
満席となった会場では、ネット予約で集まったさまざまな人々(学部大学院の現役生、他学部学生、総文OBOG、在学生ご家族等)が、「音楽・生命・時間」に「総文とは何か?」という総文10周年記念事業そのもののテーマを重ね、それぞれの思いをめぐらせながら、充実したひとときを過ごしました。
総合文化政策学部のミッションは、「現代社会が必要とする新たな価値を創造する人材を育てる」こと。「新たな価値」とは、細分化・分節化されすぎた知を「学問の本質」に戻す行為と見ることもできます。本学部学部長、茂牧人教授の冒頭のあいさつもこの視点で語られ、主催の総合文化政策学会会長、鳥越けい子教授も司会のことばのなかで、総文の存在意義とこの対談との共鳴関係に触れました。
音楽の歴史をひもときながら、音楽とは何かの本質を雄弁に語る坂本氏のトークに、福岡教授が科学の視点を加えながら伴走するかのような対談。おふたりの思考や表現が共鳴し合い、静かながら熱を秘めた、まさに「総文10周年」を記念すべき夜でした。