イベント EVENTS REPORTS 総文10周年記念事業学生委員会による企画 | 2018年10月6日

総文10周年記念事業学生委員会による企画 | 2018年10月6日

「Be総文」コンテスト

チラシ

「Be総文」コンテストを振り返って

総文10周年記念事業学生委員会 委員長 入江恭平
  • 「Be 総文」コンテスト
  • 日時:2018年10月6日(土)16時30分〜20時20分(16時00分開場)
  • 場所:青山学院アスタジオ地下ホール
  • 主催:総文10周年記念事業学生委員会
  • 後援:総文10周年記念事業委員会
「Be 総文」コンテスト立案の想い

総文10周年記念事業学生委員会
委員長 入江恭平

2018年10月6日(土)に青山学院アスタジオ地下ホールで、総文10周年記念事業学生員会※の主催で「Be 総文」コンテストを開催しました。

※総文10周年記念事業学生委員会:総合文化政策学部に所属する学生の有志13名による組織。2018年4月に結成。

コンテストは、「問題の発見・解決」をテーマに、学部での学びや自身の活動を通して発見した「問題」を提起し、それに対する「解決策」を考えるという一連の作業を企画や作品にまとめ、作品の場合はその発表も含めてプレゼンテーションを行ってもらうという内容にしました。
このコンテストを思いついたのは、これまでの学生生活を通して、学部のミッションさえ知らない学部生がほとんどだと感じたことがきっかけでした。

総合文化政策学部のミッションは、5つの分野(政策・マネジメント、文化・思想、メディア文化、都市・国際文化、アート・デザイン)を綜合的に学び、多角的な視点で課題を発見し、文化の力によって解決する「文化創造者」を育成することです。

しかし、いろいろなことができる面白そうな学部だと思い、総文に入学したものの、打ち込めるものを見つけることができずに何となく過ごして卒業していく人が多いこと、また、何か目標をもって精力的に活動している学部生であっても、「総文が何をする学部なのか」という問いに対して明確な答えを持っておらず、自分の所属している学部のミッションさえ知らないということに歯がゆさを覚えました。

モチベーションが高ければ良いとは言いませんが、せっかく貴重な多感な時期に4年間を過ごす環境にいるのにそれではもったいないと思い、「総文とは何か」を理解してもらうことで少しでも総文生としてのアイデンティティを確立させ、それによって学びや活動の意識を高め、「総文に入って良かった」と思ってもらい、最終的には学部全体の環境が良くなるきっかけになればとコンテストを立案しました。

このような私の想いをもとに学生委員会で話し合いを重ね、自分のやりたいことを見つけて活動している学部生に、学部のミッションに則ったプレゼンをしてもらうことで、それを聞く学部生に刺激を与えてもらおうと考え、プレゼンテーションコンテストという形式を採用しました。

「Be 総文」というタイトルはある委員会メンバーが考えたもので、「総文生がそのアイデンティティを意識し、本当の意味で総文生になる」という意味が込められています。

コンテスト当日

登壇者たち 左から皆川凌大、福田一樹、馬淵有咲、星万央、宮永響子、清水貫容、結城健人、入江恭平

当日は、8人の登壇者が、多種多様なテーマで1人10分程度のプレゼンテーションを行いました。審査員は、小林康夫特任教授、岡眞理子元教授、竹内孝宏教授、福田大輔准教授、いずれも総文の先生がたです。

登壇者とプレゼン内容
入江 恭平

入江 恭平(4年)

普段演劇を見ない人たちに、演劇の魅力を知ってもらう。
-演劇プロデュースチーム「シバイバ」-

演劇が日本でまだまだ浸透していないという課題に対して、演劇を社会にとって価値のあるものにするために、自身が立ち上げた演劇プロデュースチームが演劇に馴染みのないひと向けに企画したワークショップの記録映像を再生しながら、演劇の魅力を伝える取り組みを解説。

結城 健人

結城 健人(1年)

HOW TO BE CREATIVE

自身の映画制作の経験から感じた、「映画作品をはじめ創作活動ではどんな作品でも盗作が問題視されるが、クリエイティビティとは、盗作的要素を許すのではないか。それは盗作ではなくオマージュである」ということを映画『ポーラーエクスプレス』を解釈し自作した映像作品を観せることによって主張。

清水 貫容

清水 貫容(4年)

文字選びにも、こだわりを。

自身が所属する放送研究部で番組制作をする中でフォントに魅了され、デジタルネイティブ世代にもフォントへの関心が薄い人が多いことに気づき、こだわりを持ってもらいたいと設立した「フォント愛好会」とその活動を説明。

宮永 響子

宮永 響子(2年)

平和を考えるスペース作り

被爆地である長崎県長崎市出身で、自身も被爆4世であり、幼い頃から平和教育を受けてきた体験をもとに、原爆の歴史の継承者の高齢化とそれによる歴史の風化を危惧し、若者を対象としたアート作品の展示会の企画を構想し、発表。

星 万央

星 万央(4年)

路上ライブの是非について

ラッパーとして活動し、渋谷で路上ライブなどを行うが、そもそも路上で生まれたヒップホップ文化が法律で禁止されている現状に疑問を呈し、それについて深く掘り下げ調査した内容を発表。

馬淵 有咲

馬淵 有咲(4年)

映画の意義 映画に込めたメッセージ

就職活動を通して、世間や周囲が決めた「幸せ」の固定観念のようなものに縛られて自分の人生を選択している就活生が多いと感じたことから、「自分にとっての幸せとは何だろう」と考えてほしいと思い制作した映画『犬』を上映して解説。

福田 一樹

福田 一樹(1年)

愛すべきミーハー

ミーハーという言葉は悪く捉えられているが、「(芯がなくとも)様々なものに好奇心を持ち、すぐ飛びつくような姿勢」という意味でミーハーを捉え直し、スティーブ・ジョブズの「コネクティング・ザ・ドッツ」という言葉を引用して、現在の総文生にとって「ミーハー力」の必要性を述べた。

皆川 凌大

皆川 凌大(4年)

持続可能な社会における地域コミュニティの可能性

地方都市における人口減少対策としてコンパクトシティ構想が語られるが、その一方で文化多様性を保ち続けることが難しいという課題もある。自身が現在プロジェクトを行っている拠点、富山県南砺市を例に、VRを用いて文化多様性を保ちつつ地域の価値を発信する方策を述べた。

学生がこれだけの人数の教授たちを前に、緊張感のある場で、自分たちの活動や考えを話す機会は滅多にありません。さらにプレゼン後の教授たちと登壇者の質疑応答で、鋭く厳しい質問が投げかけられ、活発な議論が行われたことは他のプレゼン型のトークイベントにはないものです。普段の授業やゼミの場合は指導やアドバイス程度ですが、先生方は、ここでは我々を学生というより1人の人間として扱い、本気で批評をしてくださいました。

登壇者として、この企画を通して思い知ったことは、「自分たちの知識や努力の浅さ、未熟さ」でした(もちろん、あの場に登壇することには大きな意味があり、先生たちにはそれだけでも大したものだと褒めてもいただきましたが)。

例えば、私は登壇の準備やプレゼンの過程で、文化政策の勉強に偏っていたことや演劇の歴史を十分に勉強していなかったこと、戯曲をそこまで深く読みこんでこなかったこと、日本や海外の演劇界が現在どのような状況にあるかを肌で感じ取った知識や経験の不足など、まだまだ知らないことが多く、未熟であることを痛感しました。

それぞれが行ったプレゼンは、自分たちがこれまでの人生で蓄えてきた経験や知識を振り返り、整理し、まとめた結果であり、すべてがそこに詰まっています。それを客観視し、まだまだ未熟だと思えたからこそ、もっと努力しなくてはいけないと気持ちを高めるきっかけになりました。これは登壇者全員が思ったことではないでしょうか。

コンテストの結果は、最優秀賞は宮永響子。優秀賞は皆川凌大。特別審査員賞は結城健人となりました。

最優秀賞受賞のコメントをする宮永響子

総評で審査委員長の小林康夫先生は、最優秀賞の宮永さんについて、「原爆という重い課題を解決したいと、来年3月にスペースを借りて企画展示するというエネルギーを買いました。青山という土地で原爆について世界に知らせていきたいという思いが強く伝わり、審査員一致で最優秀賞に決定しました」とコメント。また全体については、「ほかのプレゼンテーションも興味深く、非常に楽しく拝見しました。いきいきと問題を受け止め、自分の体でものを考えようとしている。これこそ総文生らしいクリエイティブの原点と感じました。非常によい企画イベントだと感じました」とお褒めの言葉をいただきました。

コンテストを振り返って

残念ながら、プロモーションがうまくいかなかったのか(もちろんそれ以外にも改善すべき点はありますが)、聴衆がわずかという結果になってしまいました。しかし、集客のためにうわべだけの楽しいイベントを行うのでは意味がありません。その場にいた人にとってはかけがえのない機会になりましたし、初めての企画ではありますが、質の高いものになったことは確かです。

打ち上げでは、登壇者も、審査員の先生がたも、委員会の先生がたも、学生委員会も聴衆も、プレゼンの場では語りきれなかった(登壇していない人にとっては語れなかった)自分の思いや将来の展望を楽しそうに語り、お酒の入ったグラスを片手に「君のプレゼンはああだった、こうだった」と、さらなる議論の場に発展していました。私は新たにコミュニティが生まれ、強い絆が生まれたのを感じました。

この企画の目的は、先にも述べた通り、「総文とは何か」を理解してもらうことで少しでも総文生としてのアイデンティティを確立させ、それによって学びや活動の意識を高め、「総文に入って良かった」と思ってもらい、最終的には学部全体の環境が良くなるきっかけを作ることでした。

関わった人は少なかったけれど、その人たちには「総文とは何か」を理解してもらえましたし、自分たちの行っていることが学部での学びとリンクしていることも実感してもらうことができました。また皆で達成感を味わい仲間意識が芽生えたことで、総文に入って良かったと思ってもらえました。ただ、この企画が学部全体の環境を良くすることに寄与するかどうかはまだわかりませんが、それを実現するために何かこのような企画を続けていきたいという意見も寄せられました。

私はもう少しで卒業してしまいますが、今後の活動は今までの活動の延長にあるものですから、その繋がりは物理的にも意識的にも途切れることはありません。何かしらの形で貢献したいと考えています。

誇りを持って本番を迎えることができたことを、登壇者をはじめ、支えてくださった先生がた、学生員会のメンバー、そして見に来てくれた人など、「Be 総文」コンテストに関わってくれたすべての方に感謝します。

表彰式は、10月8日(月・祝)に開催された総文10周年記念トークイベント「対談<坂本龍一×福岡伸一:音楽・生命・時間>」にて、対談終了後に行われ、総合文化政策学会より参加者全員に賞金と賞状が贈られた。

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