2008年に総合文化政策学部が開設してから今年度で10年がたちました。さらに今後の10年をどうするのか、10年後の総合文化政策学部はどうなっていくのかを、この10周年事業を通してこの1年間考えたいと思います。
本学部は、文化や芸術等に関する理論を学び、同時にそれをマネジメントする能力を養成する学部です。ここに、文化創造のために必要な要素を二つあげておきたいと思います。
その一つは、プラトンの『饗宴』という本の中にでてくる「エロース」という力です。これは、美のイデアに向かって飛翔していく魂の力です。自分にないもの、不足しているものを希求する力、美を求めて恋い焦がれる憧憬の力です。喉が渇いて水を求めるように、憬れ、求める力です。そのときに、詩や芸術を産み出したり、学問を産み出したりし、最終的には、美を産み出すことになります。文化や芸術を学ぶときに、まず必要なのは、この美のイデアを憬れ、求めて、飛翔していくエロースという力が必要となります。
また美のイデアを希求するときに、詩や芸術、また学問を産み出すのですが、そのときに、人は、少し狂気を含むということもあります。マニアという言葉がありますが、プラトンは、この言葉を狂気という意味を込めて使っています。私たちは、芸術や文化を創造するときに、そこに没頭する、専念して他を振り返らないという若干の狂気を必要としているともいえると思います。
次の10年間のために、皆さんが、このエロースと若干の狂気をもって文化創造に携わっていただきたいと願っています。
最後になりましたが、この10年間は、歴代の学部長である石崎晴己先生、杉浦勢之先生、堀内正博先生を中心にして、学部に関わった教職員の皆様、学生・院生の皆様で力を合わせて学部を形成してきた賜物だと思います。この場をお借りして、感謝申し上げます。
2018年4月10日